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開店休業の記

今日の本

フーコン戦記

 「フーコン戦記」(古山高麗雄:著 文藝春秋)、読了。

 「断作戦」、「龍陵会戦」に続いて発表された三部作最後の作品。フーコンはビルマ(現・ミャンマー)北部の谷地。ここで日本陸軍第十八師団(通称・菊兵団)が圧倒的な戦力差の中で壊滅状態になっていく過程を、老いた孤独な生き残りが回想するというもの。著者の視点による私小説形式だった前作「龍陵会戦」とはまた違う手法がとられています。三部作で描かれている戦場はガダルカナルやインパールとは違ってあまり一般には知られていませんが、悲惨さではおそらくそう差はないでしょう。

 「経験していない者には話してもわからない」というような言葉が何度も出てきます。でも、著者は三部にわたってあの戦争について書きました。

 わたしも「いかに事実に即して写実的に書かれていても、体験していない者に戦場がどんなところかなんてわかるわけないよな」と思いつつ、この三部を読みました。

 本作では戦場のできごとより老境を迎えた主人公の元兵士があの戦争は何だったのかと考えては堂々巡りを続ける姿に描写の重心が移ってきているように思いました。前作でもそういう傾向はありましたが、より強まった感じです。

 本作冒頭にあるのですが、フーコンの戦場に投入された連合軍のM4中戦車は2,000両、対する日本陸軍はM4とは勝負にならない時代遅れのが(というか、そもそも日本陸軍はM4に正面から対抗できる戦車をほとんど持っていませんでした)たった3台。信じられないほどの凄まじいケタ違いさ加減です。戦車以外の兵器、資材、兵員数でも絶望的なまでに差が開いており、これでそのまま戦争を続けようとした愚かしさには言葉も出ません。しかし、現代の日本がこの時代よりは賢くなったのかと問われれば・・・、せめて多少はマシになったと信じたいところなのですが。