
かなり気に入っているアルバムですが、続けて何度も聴くことはありません。そういう音楽もあります。
Camper Van Beethoven 1989年の5枚目 "Key Lime Pie" です。
フィドルが多用され、ロック、フォーク、カントリー、ごちゃ混ぜ。加えてなぜかたまに東欧〜ロシアっぽい旋律(よく知りませんが)が紛れ込んだりもして。ボーカルの David Lowery は鼻声でヘナヘナと。全体的にアメリカ西部あたりの大農業地帯を思いおこすような(よく知りませんが)田舎風の音なんですが、のどかさとか素朴さとかいうのはほとんど感じたことがありません。代わりに聴いていると「不穏」とか「屈折」とか「憂鬱」とかいった不吉な単語が頭の中を明滅します。
冒頭の物悲しげなインストルメンタル "Opening Theme" が、すでにヤバ気な雰囲気をじんわり醸し出しているものなぁ。ギターもドラムもベースも全面参戦のフィドルも、どいつもこいつも特別「変」ではない、のですが、どれもどこか少しづつ危うい。じりじり崩壊へと向かっているのような、不気味な緊迫感があります。あからさまな狂気より、こういうのがかえってヤバいんじゃないでしょうか。
通して聴くと気が滅入ってくることもしばしば。「なら、聴かなきゃいいじゃん」というご意見はごもっともなんですが、つい誘われるように時々聴いてしまうという。う〜ん、ヤバい。ヤバいよ。
一応、好きな曲を挙げとくと、"Sweethearts" 、"Borderline" あたり。