メニュー 蕭寥亭 検索

開店休業の記

今日の本

人を愛することができない

 「人を愛することができない」(中島義道:著 角川書店)、読了。

 哲学者としての愛に関する考察の部分と著者個人の自伝的告白の部分がないまぜとなった、なんとも分類しがたい本です。ひょっとしたら私小説?

 哲学者の書いた本、というと「難しそうで」と敬遠されそうですが、決して難解ではなく、むしろ文章的には読みやすいと思います。ただし、生ぬるい恋愛話かと思って気楽に手を出すと痛い目にあうかもしれません。いや〜、わたしもこんなに居心地の悪い本は久し振りに読みました。

 特に「人を愛することができない」という著者の生い立ち・家庭環境に関する告白の部分は強烈かつ生々しく、共感できるところもないではないのですが、それより呆気に取られてしまう箇所の方がずっと多かったような気がします。著者の事例はかなり特殊で、ここから普遍的なものを引き出すのは困難なような・・・。読者に対する哲学的な挑戦なのか、心にたまったものを吐き出す衝動に駆られた結果なのか、こういうものを書いた著者の意図も見当がつきかねます。

 ただ、毒にも薬にもならないような本はもうたくさん、という向きにはオススメできるかも。