メニュー 蕭寥亭 検索

開店休業の記

今日の本

背信の科学者たち

 「背信の科学者たち」(ウイリアム・ブロード/ニコラス・ウェイド:著 牧野賢治:訳 講談社)、読了。

 科学者がその職務において犯した捏造、改竄、欺瞞を取り上げ、そうした不正はなぜ起こるのか、どんな状況で起こるのか、自己修正機構を持つとされる科学の世界でそうした不正が絶えないのはどうしてなのか、ともすれば無批判で信頼されがちな科学の在り方に疑問を投げかけたもの。

 この本の原書が出版されたのは1982年とかなり前ですが、内容は古びておらず、むしろ科学者の不正事件の報道が続く昨今、大変参考になります。

 観察者は自分が見たいものを見る。科学の世界に設けられた伝統的なチェック・システムではなく、「時間」の試練を乗り越えたものこそが客観性を手に入れることができる。科学は合理的に実践される唯一の知性ではない。科学は人間による自然の理解であり、人間的な過程である。等々、印象的な指摘がいくつもありました。

 訳者による、原書出版以降に起きた科学者による不正事件の紹介も親切です。

 しかし、野口英世の業績についてその死の約50年後に再評価が行われたところ、ほとんどの研究がその価値を失っていた、という記述はちょっとショックでした。千円札になっちゃったんですけど・・・。