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開店休業の記

今日の本

院政

 「院政」(美川圭:著 中央公論新社)、読了。

 日本の天皇制は世界的にも稀なほど長期にわたって継承が続いているという特徴がありますが、一方で他国の君主制では終身在位が一般的であるのに対し、やたら多くの天皇が生前に退位しているという奇妙な事実があります。その生前に退位した元天皇、すなわち上皇(上皇が出家した場合は法皇)が、形式的には引退した立場でありながら実権を握り続けるという、さらにややこしい現象が本書の題となっている院政です。本書は特に平安末期の院政に焦点を当てて解説しています。

 似たような政治形態としては江戸時代の大御所政治(将軍職を後継者に譲った元将軍=大御所が実権を掌握し続けたことを指す)なんてのもありますし、現代でも時に「院政」と揶揄されるような状況が日本の政治の世界や企業で見られることがあり、その源流として個人的に非常に関心のある現象でもあります。

 院政、そのポイントは人事権にあり、と本書は指摘していますが、これも現代に通ずるところがありそうで可笑しいです。また、以前は通説とされていた学説に対する最近の学問的成果を踏まえた批判的な論評も興味深いです。